チベット医学と西洋医学の接点3

さて、今日は、Pagliaro先生の記事の続きを引き続き訳すことにする。今日、昼間、Pagliaro先生から電話をいただき、新しい本を出版したので送るからね、とはつらつとした声でお電話をいただいた。「今度は、さらに難解だけれど、面白いよ!」とおっしゃっていたので、今から楽しみだ。でもやはり専門外の単語が多く、細部が難しく厳しいなあ、とくじけそうにもなる。とはいえ、そうも言っていられない。心と身体は繋がっている。個人と宇宙は繋がっている。という先生の科学的なアプローチ、実践的な医療の存在は、今後生きていくうえで、わたしの励みになるだろうから、やっぱりふうふう言いながらも、訳していくぞ。


チベット医学と西洋医学の接点2からの続き)
仏教の主な心理学の原理のひとつは、心(言い換えれば、生物学的に、または認知的に)は個人という制限された次元から、永遠で無限のレベルに達するために実践を繰り返すことだということを確認したい。(仏教における)瞑想は一人の個人を形成する心と身体、そしてエネルギーの三者のバランスをとるために大変有効であると考えるのである。


それと同様、医療のホリスティックモデルでは、個人の次元ーミクロコスモスと自分を取り巻く現実ーマクロコスモスの相互の依存関係、また相互の交換関係において理想的な均衡を保つことを目標に考える。したがって、病気が起こる原因は、このミクロコスモスとマクロコスモスのバランスが崩れることと認識する。


このホリスティックヴィジョンにおいては、『感情』というエネルギーが病気の発生原因、また健康を保つために基本的な要素になると考える。我々の経験によれば、『感情』というエネルギーは、身体の各器官のレベルにおいても、心理的レベルにおいても、生化学的に変化を生み出すための導火線的な役割があると考えられる。


感情というものは、過去ひどいトラウマを受けたとしても、あるいは反対に大変に嬉しい経験を受けたとしても(現在の感情というものは、過去、長い間に経験された感情の積み重ねによって生まれるものだが)、思考や振る舞いを大きく左右するものだ。過去の経験が現在、あるいは未来を決定するエネルギーともいえるものだ。それはまた、生物学的なレベルでも、また細胞形成のレベルにも大きく影響を及ぼすものでもある。


感情がいかに肉体に大きな影響を与えるか、その科学的な研究論文を多く発表している神経生物学者Candace Pertが言うように、感情は、細胞レベルで現実の肉体に情報を与え、変容を促す。つまり、「感情」というエネルギーが、肉体を変容させる。物質を変容させるのである。エネルギーはすなわち物質(マテリアル)となるわけだ(Pert 1997)


ホリスティックなアプローチをする心理学、臨床心理学、精神医学、また医学的な研究では、たとえば「怒り」「攻撃性」「悲しみ」「苛立ち」「エゴイズム」などのネガティブな感情が長期に渡って継続すると、例えばある種のぜんそく、偏頭痛、関節炎、心臓病、胃潰瘍、高血圧やその他の病気を誘発することが認められている。


反対におだやかで、健康で、楽天的で、深い信頼を持ち、利他的な意識は、免疫のシステムを高め、心臓と血液循環の安定、また病気そのものを快方へと促すのだ。このように、感情と肉体の状態、また感情と病気の深い関係は明白だ。


ホリスティックな医療では、その治療がより効果を上げるために、従来の薬の投与などの治療とともに、生死、つまり生命というものを熟考すること、また瞑想の実践を率先していくことが、いよいよ大切な要素となってきている。


今日はここまで。次回もまた不定期になるが、「心の状態と癌」という、いよいよ本題の章を訳してみますね。