アウンサンスーチーさんの公判、「彼らはスーチーさんを無きものにしたいのだ」

今日はil sole 24oreの電子版のビルマの記事をそのまま訳すことにする。ちなみにil sole 24oreという新聞は、日本でいえばNikkei、またはウオールストリートジャーナルといった経済紙で、イタリアでは最も重要な経済紙でもある。タイトルもそのまま24oreのタイトルにしている。


ビルマの民主運動のリーダー、アウンサンスーチーさんの裁判は、軍部により厳重に警戒された刑務所のなかでほとんど秘密裏に行われたが、この水曜に行われた第三回めの公判のみ、外交官やジャーナリストたちの参加が認められた。


ヒラリークリントンが、このノーベル平和賞受賞者の裁判に関して「まったく恥ずべきこと」と発表したにも関わらず、第四回目の公判の部外者への扉は、さらに拡張された重々しい軍部の警戒のもと、しっかりと閉じられ、再び秘密裏に進められることとなった。刑務所の扉の外には、国民民主連合のメンバー30人あまりが見守っていた。


水曜日の公判には、30人あまりの欧州、米国のの外交官、国連代表、また、何人か軍事政府と結びつきのあるジャーナリスト、数人が参加を許された。公判の最後に、スーチー氏は「いつかもっと良き日が訪れたときにお目にかかりましょう」と言い、彼らの公判への参加に深い感謝を表明した。


しかし、スーチー氏の正式な弁護人であり、フリーダムナウ・アソシエーションの議長でもある、国際弁護士Jared Genser氏は、心配する。
ビルマの弁護士団と協力してどうしても阻止しなければならないのは、水や医療状況がきわめて劣悪なビルマの刑務所に彼女が拘留されることを避けること、そして『死刑』の判決が下されないようにすることだ」

「結論は始めから決められている。裁判官は独自の采配はふるえないのだ。まったく馬鹿げた罪状で起訴され、公判もシナリオ通りに行われている。ビルマ政府は2010年9月の選挙の前に、反対勢力のリーダーである彼女の存在をかたづけたかったのだ。スーチーさんもそのことは知っていて、体調がよくないにもかかわらず気丈に勇気を持って臨んでいる」


国際世論は彼女をサポートしている。国連事務総長であるバンキームン氏は、軍事政府に強く抗議をし、現在の状況を好転させる方向へ強く働きかけるべきだ、と弁護士は締めくくった。


現在、40年間の間、政治的権威となっているビルマ軍事政府は、先週、スーチー氏を、五月初旬にラングーンの自宅に、湖を渡って訪問した米国人のジョン・ウイリアム・イエッターと不当に面会したとして、起訴された。スーチー氏は5年あまりの懲役の罪に問われる可能性がある。これは第一の貿易国である中国北京政府に支持されている軍事政府が、スーチー氏の選挙出馬を阻止するためと思われる。ビルマ政府は、2010年に行われる選挙の、国際的にも認知される自由の国としてのイメージ作りをしたいのだ。


(フランスの)サルコジ大統領は、「まったく受け入れられない状況だ」と憂慮の姿勢を隠さない。アウンサンスーチー氏に大統領夫人カルラ・ブルー二さんもおおいに賛同している。カルラさんはビルマ政府に彼女を解放する要請を出しているとフランス政府のスポークスマンは発表した。「ノーベル平和賞受賞者であるスーチーさんをサポートすること、そしてカルラ夫人のサポートは大変に重要だ」とスポークスマンのLuc Chatel氏は言う。「もちろん、サルコジ大統領も、カルラ夫人と同じ意見だ。内閣会議でもビルマの現状について言及した」とLuc氏はつけくわえる。


スーチーさんの状況は大変心配でまったく受け入れられないことだ。政治的な理由からだけではなく、もちろん人間性の問題としてもだ。彼女の健康状態が悪化している。それに来年の選挙に向けて、反対勢力のリーダーを逮捕するなどとは、想像もできないことだ」


カルラ サルコジ ブルー二は、「スーチーさんがこのような状況に置かれていることは、堪え難いこと」と月曜にビルマ政府に公開レターを送った。
21 maggio 2009


カルラさん、えらい! イタリアの政府ができないことを、フランス大統領夫人として立派にやってくれた。以前カルラさんはイタリア現首相のあまりの傍若無人な振る舞いにえらい剣幕で「フランス人になって本当によかった!」と言っていたけれど、まったくその通りだ。ベルルスコー二現首相がヴェロニカ夫人と離婚しようがしまいが、どうでもいいことだ。イタリア現首相は、国際問題には何の発言もしないけれど、ひょっとしたら、世界がどうなっているのかさえ、知らないのじゃないかな、とも疑惑を感じる。サルコジ大統領の政治的なかけひきには、わたしはまったく好意を抱いていないが、それでもフランスは人権の国だ。パリもダライラマ法王に堂々と名誉市民を授与する決定をくだしたし、それをわたしは単純に喜びたい。


しかし、スーチーさんのことがとても心配だ。この公判は実は大変に多くの問題を孕んでいることを、どうかたくさんの人々が早く気づいてくれることを、心から祈っている。


ところで、NIKKEIの電子版の記事はというと、以下のもの。

ミャンマー特別法廷、スー・チー氏らの国家防御法違反罪を認定

 バンコクミャンマーの特別法廷は22日、自宅軟禁中に外国人に面会したとして民主化運動指導者アウン・サン・スー・チー氏(63)に対し、国家防御法に違反したとの罪状を正式に認定した。世話役の母娘、自宅に不法侵入した米国人男性にも同様の認定をした。いずれも来週中にも判決を言い渡す見通し。罪状認定は事実上の有罪判決で、スー・チー氏は3—5年の禁固刑となりそう。欧米諸国の非難が一段と強まるのは必至だ。
 スー・チー氏は公判5日目で初めて発言を許可され「法を犯しておらず、無実だ」と反論した。


同じ経済紙として内容を比べてみてください。電子版とはいえ、一目瞭然でしょう。欧米の非難だなんて、日本は事実上、アメリカの属国的存在(異論はあるでしょうが、経済的にはそう考えておくほうがよいでしょう)でもあるのに(国債踏み倒されたら、えらいことだよ)、他の惑星にある国のように思っているのだろうか、この記事書いた方は。短くてもいいから、ひとつの宇宙観を形成するような記事書いてほしいなあ。日本は俳句の国なのに。たのむよ、ニッポン!