イタリアのチベット人、ショートフィルム

さて、もはや数ヶ月前のことになるが、当時のイタリアのチベタンコミュニティを運営していた青年たちとともに一本の記録映画をまとめた。2007年からビデオカムや一眼レフのビデオを使って、不規則に撮影していたフィルムが次第に形を成しそうになってきたので、2009年あたりから何を方針に編集していくか、コミュニティの青年たちと、監督を引き受けてくれたイタリア人の若い映画監督とブレストを繰り返し、二方向の内容に決定、約60分のドキュメンタリーにしたものだ。もっと以前にこのドキュメンタリーについてはブログに書こうと思っていたが、いろいろな出来事が起こったり、新しいプロジェクトが立ち上がったりで、時期を逸してしまった。

「The Light of The Snow Lion」とわれわれに名付けられたそのドキュメンタリーは今年2010年の3月10日、ラサ侵攻から51年めのメモリアルデーにCasa del Cinemaというローマの映画の殿堂で満席!で放映され、喝采を浴びた。また、それはローマ市による全面バックアップでもあった。と自分が関わっているのに、喝采だなんて自画自賛のようだけれど、実際のところ、わたしは本当に、そもそもチベットの青年たちが温めていたプランを手助けをしたにすぎず、アイデアから編集まで、ことあるごとに集まって(ボローニャーローマ間を行ったり来たり)ああでもない、こうでもない、と皆で話し合ったり、意見の食い違いで小さな諍いを起こしたり、てんやわんやで漸く出来上がったものだ。しかも超低予算を勇気を持って、このまま行こう、かまうもんか、と皆でアクロバティックにクリアした。また、われわれは映像に関してはまったく素人だったから、編集途中、素人の強みで斬新すぎるアイデアをぶつけて、イタリア人の青年監督を困惑させ、やる気をそいだりもした。その長い時間の葛藤とやりくりの末、出来上がったものがローマの人々の目にふれ、ブラボーの喝采と温かい拍手をいただいたことは、わたしたちの今後の活動の、本当に強い「力」となったのだ。

このドキュメンタリーは、これから監督の青年ともよく話し合って、おそらく何らかの形でWEBにのせることになると思う。チベットの青年たちとわたしは、小規模ながら、なるべく多くの人々に観ていただきたい、という希望から、WEBが最も適したメディアではないかと思っている。少なくともイタリア語、英語の二言語、そして出来る事なら、わたしの母国語である日本語でのせたいとも考えている。なお、本篇にはコミュニティのの新代表、明確なプレゼンスと深くモティベートされた説得力で、現在のコミュニティをぎゅっとまとめるケルサン嬢も登場する。そしてもちろん、ダライラマ法王の独占インタビュー、チベットの人々へ法王からのメッセージもいただくことができました。

ところで、今日は、その本篇の前身となるトレイラーをこのブログに載せようと思っている。2008年後半から2009年にかけて作ったもので7分強、「このトレイラーだけで内容が完結したもの」という目標で試作し、Youtubeに載せていたものだ。本篇60分は*イタリアの社会にチベット文化がどのように影響を及ぼしているか、というテーマ(イタリアの医学界に焦点をしぼり)と*イタリアに住むチベット人たちの生活と本音というテーマをモザイクにして、スピーディに展開しているが、7分トレイラーでは政治的なテーマだけにしぼって、ひたすらスピーディに、強く、若々しくというトーンで走った。また、2008年の大規模な抗議活動のすぐあとだったので、そのトーンが全体に漂っており、今観ると再び胸が痛む。

イタリア語なので、映像の下に、法王の語られている言葉以外は、すべて日本語に訳して載せます。(法王の言葉は英語なので、どうか言葉を胸に抱いていただければ、と思います)本来、わたしがソフトで日本語字幕をつけるべきだが、ここしばらくその時間がとれそうになく、どうか観づらい体裁、お許しいただければと思います。

Tibetans in Italy Trailer

語り順に
S「現在、状況は悪化していると僕は思っている」
T「チベットでこんなに多くの命がけの抗議活動が行われたことが、胸に強く突き刺さったんだ」
S「状況をオプティミスティックには僕には捉えられない。むしろペシミスティックになってしまう」
T「チベットは今だって抑圧され続けている」
D『中国が世界のボスってわけでもないでしょう。世界は中国に命令されて動いているんじゃない」
T「この2、3日はまったく信じられない状態だった。電話がひっきりなしにかかってきたんだ」

ジャムヤン・ノルブ『中国はチベットを侵略したんだ。軍組織がないチベットのボーダーを超えて中国は侵略してきた」

S「中国のパワーはとてつもない。ほとんど飲み込まれるような・・・。全てを飲み込んでしまうような・・・」

カルロ「もし君たちが心から非暴力を信じ、平和を願うなら、チベットをサポートすべきだ。チベットは世界で唯一非暴力で闘う民族 なんだ」

パルデン・ギャツオ『実際、わたしの体調はそう悪くない。たとえ、何年もの長い間、中国の強制収容所で拷問を受け続けてきたとしても」

T「僕らの文化はとても豊かだ。中国のチベットへの抑圧はまったく不当なことなんだ」
カルロ「たった600万人のチベットの人々。その人口のうち120万人が虐殺された。西洋ではほとんど語られないが、これは歴然としたショーア(ヒットラーによるユダヤ人の大量虐殺を通常差す言葉)だ。

T「チベット中国当局によって逮捕されるということは、とんでもない拷問が待っている事だ。強制収容所でのひどい拷問の人生が待っていることだ」

G「チベタンコミュニティのことが知りたいの?」
TS「わたしが病院で子供を生んだとき、看護婦さんが、チベットの女の子に生まれてはじめて会ったわ、って言ったの」
T「僕たちチベット人はイタリアに約250人。各地にばらばらに住んでいるんだ」
D「ローマには約20人のチベット人が住んでるわ」
TS「わたしがチベットから来た、というとみんな微笑むの」
DY「わたしはイタリア人はとても優しいと思うわ」

ダライラマ法王

S「僕がチベット人だと思える理由はいろいろあるけれど、やっぱり何と言ってもスピリチュアルな見地から観て、ということ。それが特別なこと」

アマラ ジェツン・ペマ「法王が常に強調されてきたことは、よい人間でありなさい、ということなんです」

ダライラマ法王

T「ダライラマ法王は僕らの長であり、チベットの人々の指標。強さ。希望を代表しているんだ」
S「チベットの人々の心にはダライラマ法王がいるんだ」

カルロ「チベットにより世界を再生させようというダライラマ法王の夢は失われかけている。ダライラマ法王の心をわれわれは失いかけている」

T「ダライラマ法王はチベットの外にチベットを再建することに成功した」
S「チベット人。僕が感じるのは、僕には国がないということなんだ。僕は国を持たない男なんだ」

T「中国の人々を愛さなくてはいけない。憎んではいけない。彼らだって幸せを望み、苦しむことは嫌だと思っているんだから」
T「本当に罪があるのは中国人ではない。国家の政策だ。中国の人々には罪はないんだ」

カルロ「中国は、政治的、経済的、軍事的、すべての見地からストラテジカルに重要な地、チベットを侵略したんだ」

T「僕は中国の全体主義の政策を信用しない。嘘でぬりかためられているから」
クラウディオ「ラサはチベット人たちを野蛮だと見なす漢民族でいっぱいだ。商売人の彼らは仏教寺院から盗んだ物を売り飛ばしているんだ」

J「チベット人が世界に、世界の政府に納得させるべきことは、チベットはそもそも独立国家だったということだ」

T「僕はヨーロッパ議会の確固とした行動をを望んでいる。さもないとチベットビルマと同じような状況になる(いつしか忘れられる)」

ブルーノ「われわれは西洋が育んで来たデモクラシーにのっとって、確固とした行動を起こすべきだ」
S「もし中国は受け入れるなら、僕は完全自治(self determination)に賛成だ」

テッキオ「われわれはEU議会にリファレンダムを要求しているが、このリファレンダムによって、ようやくチベットの人々は自分たちの本当の望み、意志を自由に語るようになれるだろう」

カルロ「世界の民族、国家はすべて自由、独立、民主主義に向かっている」

T「チベットの人々は、われわれは、決して抑圧に屈しない」
(敬称略)