中国政府はイランの現実にどう反応しているのか。

イタリアのチベットコミュニティが、ここ数年のイタリアでの政治的、文化的活動、有識者の意見をハンディカメラで撮ったミニDVが85本にもなったため(85時間!それぞれ個人的に撮ったものも合わせてだけれど、ずいぶん活動したんだ。なかには、「これっていったいいつの記録だったっけ? というものもあって整理が大変だ)、ローマで映像の編集を生業にしているパブロ青年に依頼して、一時間くらいにまとめてみよう、ということになった。なかにはわたしが代理で撮った映像もあるが、わたしが撮ると、なぜか画面がやたらに揺れまくって、さらに時々逆さになるため、「ハリシュマの撮った映像観てると乗り物酔いするみたい」と白い目で観られた。本人は一生懸命だったのです。ごめんなさい。


というわけでこの数日、二人の青年が、どの会議、どのデモ、どの人の話を編集するかを相談するためにローマにやってきていて、パブロ青年のお宅に行っていたが、わたしも例のごとく、空いた時間にメトロに乗ってパブロ青年のお宅に伺い参加させていただいた。しかしいざ編集するとなると、「あれも大事」「これも大事」という気分にみんながなり、このままだとゆうに10時間を超すねえ、選べないねえ、どうする? という感じでもある。しかもわれらはまったくのど素人だから、めちゃくちゃなリクエストをするらしく、パブロ青年から「そんなに簡単に言うけれど、ピンがはずれている、揺れたり、ひっくり返っている映像や、オーディオが悪くて全然どうしようもないものを、リタッチすることはできないんだよ」と言われ、それでもあいかわらず、無茶なリクエストをして、困惑させたようだ。パブロ青年も軽く引き受けたはいいけれど、あとでぶつぶつ文句を言っていることだろう。でもここ数年、チベットの青年たちが活動してきた記録がまとまるのは嬉しい。どんな活動をしてきたか、どんな意見を持っているか、具体的に記録に残ることは、後にイタリアでコミュニティを運営する青年たちの指針にもなるだろうし、反省材料にもなるだろうし、多分有益ではないかな、とみな思っている。パブロ青年、よろしくお願いします。


さて、そういうわけで、カセット選びの最中、チベットの青年たちといろんな話をしたが、おりもおりなので、もちろんマイケル・ジャクソンが話題に上り、一人の青年が「ダラムサラに居たころ、妹が編んでくれたセーターに編み込んでもらったのがBEAT ITという文字だった。マイケルのことは残念」という話をし、ところで「死」はイタリアでは絶対タブーであるが、本当のところチベットはどうなの? みたいな質問がパブロ青年から出て、チベット青年たちはチベットにおける『死』のコンセプトについての説明をしていた。チベットでも死後49日間のバルドがあるので、日本人の「死」と似ている。しかし「輪廻」という観念は日本の仏教ではどうなんだろう。わたしは日本の「輪廻」観が、いまひとつ明確に分からない。一方、カトリック社会に育ったパブロ青年と、その助手であるダビデ青年は、ダンテの「神曲」にある、「天国」「れん(火に東)獄」「地獄」の話をし、ちなみに文学としては「地獄篇」が一番面白い、と言っていた。わたしも昔ざっと読んで(日本語で)、そう思った。ともかくマイケル・ジャクソンのことはわたしもとても残念だし、可哀想に思う。彼もやっとほっとして本当のネバーランドへ旅立つことができるだろう。カトリックでは死後も魂はディメンションを変えて魂は残る、「永遠の魂」が存在する、と考えるそうだ。


そんな雑談のとき、ひょっと誰かが「ところで今のイランのことは中国ではどんな風に報道されているのだろう、だいたい報道されているのだろうか」などと疑問を呈していて、「そうだねえ、いったいどうなっているんだろう。中国ではコンピュータにネットの情報にフィルターをかけるソフトを組み込む法律ができて、チベットのパラボラアンテナを壊したり、ネット規制がいよいよ厳しくなっているが」などと話し、「ひどい話だ」「時代錯誤」「何が共産主義だ」「全体主義」「チベットはそもそも独立国だったのだ」と皆でひとしきり、中国政府を批判した。そして「イタリアにいるからこんなに好き放題批判できるけれど、チベット国内にいる人は一言そんなこと言えば監獄行きだ」と話し、さらに「とんでもない話だ」「許されないことだ」とみなで激高した。リピート。いま、中国政府下で行われている人権蹂躙は、絶対に許しちゃいけないことだ。


そこで家に帰って、イランのことはどんな風に報道されているのだろう、と新華社の日本語のページに行ってみたが、今回の大規模抗議行動についての記事、を見つけられなかったので、英語サイトに行ってみると、え! けっこう報道されている。
http://news.xinhuanet.com/english/2009-06/23/content_11589085.htm

BEIJING, June 23 (Xinhua) -- China repeated its stance Tuesday on the post-election situation in Iran, saying it respected "the choice of the Iranian people.""China hopes solidarity and stability in Iran could be maintained," said Foreign Ministry spokesman Qin Gang at a regularpress briefing.Media reports said that hundreds of thousands of protesters have taken to the streets as President Mahmoud Ahmadinejad's victory over opposition candidate Mir Hossein Mousavi in the elections is contested.Mousavi has said he believed the vote was fixed in favor of Ahmadinejad, while the incumbent said the vote was fair."The election results should be decided by the Iranian people, and the disputes and problems arising from the election should be decided by the Iran itself," Qin said.

外務省のスポークスマンプレスリリース。選挙は無効としてムサビ候補者支持の大多数の人々が市街で抗議行動を起こしたことをメディアは報道しているが「われらは人々が下した選挙結果を尊重している」、「イランの安定が継続することを望んでいる」と改めて表明。「選挙結果は、あくまでもイランの人々の手にゆだねられるべきである。そして選挙により噴出した論争、そして諸々の問題は、イラン自身により決定されるべきである」だそうだが、一体どういう意味なのだろう、と他の記事を見てみると、こういうのもある。
http://news.xinhuanet.com/english/2009-06/23/content_11587671.htm
http://news.xinhuanet.com/english/2009-06/22/content_11581921.htm

法律を逸脱した大規模抗議行動で457名逮捕、警官隊とテロリストグループの間で起こった衝突で13人死亡とある。やっぱりね。抗議行動を起こしたのは「テロリストグループ」と断定されている。銀行や店のガラス窓を壊したり、武装したテロリスト集団がモスクに火を放ったり、ガソリンスタンドや軍用地を攻撃したりしたそうだ。へえ! イタリアの報道とは正反対だ。こんな報道がされているのだ。この歪曲、毎度のことながら恐ろしいこと。
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/230889/

しかも胡錦濤アフマディネジャド大統領と6月17日に会談しているみたいだ。日本語の新華社のサイトは会員制で全部読めないが、会員になりたくないので、どこか他のサイトでこの会談への言及があるかどうか、検索してみよう。

しかし中国語のサイトではいったいどんな風に報道されているんだろう。こういうときに言葉は障害になる。インターネットのシステムで、一番の壁は言語だ。はやく完璧な翻訳ソフトが開発されるといいな、と思っている。がんばれ グーグル、中国ネットのフィルタリングをいいなりに手伝っている場合ではない。